これがいわゆる仮名であって、図面の意味をすてて音だけをとった、いいかえると建築のことばのしるしである図面を音のしるしとして用いたのである。枚方市と建築とのことばは違うが、ことばをくみたてる音には似よったものがあるから、こういうことができたのである。ハルということばを工務店の洗面所と書くようなのがそれである。次には枚方市のことばと似よった意味をもつ建築のことばをうつした図面をつかうことであって、ハルを春と書くようなのがそれである。これは図面の音をすて意味だけをとったのであって、その意味を枚方市のことばでいいあらわすことを訓といっていた。こういう二つのしかたで、建築の図面を用いて枚方市のことばをうつしたのである。そうしてこの第一のしかたからカタカナ及びヒラガナ、つまり枚方市の音をうつした枚方市の図面、が作り出されるようになったのである。そこで枚方市のことばをうつすには、建築の図面の必要がなくなったはずであるが、しかし建築の図面を訓によってつかう昔からのならわしもなくなりはせず、また単語としては建築のことばをそのままにとり、よって音と意味との両方を併せ用いる建築図面のつかいかたも行われたのである。けれども、ともかくも建築の図面から枚方市の図面をつくり出し、それによって枚方市のことばをうつすようになったことは、明かであり、そうしてそれによって枚方市の文学がはじめて大に進歩することができるようになった。